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優生学研究の組織化と各国の優生学研究の動向-雑誌『民族衛生』にみる1910~1930年代前半の欧米諸国情報を中心として-
著者:大瀬戸 美紀
日米高齢者保健福祉学会誌 第2号(2007.3)p271-280
2007年03月31日発行
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日本民族衛生学会の優生学研究は、戦時厚生事業期においてイデオロギー及び実際的な「悪質遺伝者のふるい出し」のための方法論として国策に導入された。この時期の日本では、優生施策の本格実施に向けて諸外国の優生施策の情報を積極的に取り入れていこうとする動きが強く、国際的な優生学研究や諸外国の優生施策の動向が日本の民族優生方策に直接的な影響を及ぼしている。そこで、本稿では1883年に優生学が提唱されてから、1930年代に国際的に優生学研究が政策化に向けて活発に展開されるまでの動きを、主に雑誌『民族衛生』の記述より明らかにする。その上で、国際的な優生学研究の動向が日本の優生学研究に与えた影響について検討する。
ワークフェアとして「生産的福祉」の再照明―韓国の自活支援政策をケースに―
著者:尹 文九
日米高齢者保健福祉学会誌 第2号(2007.3)p253-269
2007年03月31日発行
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最近、先進諸国では福祉国家の再編をめぐって「ワークフェア」がキーワードになっている。韓国でも経済危機以後、金大中政権の誕生とともにワークフェアの一種である「生産的福祉」論が社会福祉政策の基本理念になり、それを実現させるため自活支援事業が施行されてきた。本稿ではワークフェアに対する多様な解釈が韓国ではどのように理解され、また、実際にどのような政策が実施されてきたかを検討することを目的にする。こうした目的を考察するためのケースとして「自活支援事業」を取り上げ、その事業施行の背景や運営体系および実施現況についてまとめる。そして、同事業を実施する中で生じた問題点や残された課題について具体的に考察することにする。
日本では企業だけに限らず、学校においても改革が進められている。すなわち教育改革である。この改革について本稿では主に小学校を例にとりながら論じることにする。小学校での例を取り上げる前に、まず、教育活動を進めるための全体像である教育課程のとらえ方やその改善のねらいを論じることとする。その上で、1987年の臨時教育審議会の答申以来出された教育改革へ向けての多くの提言や答申に対して学校はどのように取り組んでいるかを学校の現状と併せて述べることにする。また、子どもを取り巻く環境の悪化と思うように進まない教育改革を憂える一人として改革の課題についても論じることにする。そのことが今後の教育改革の在り方についての一つの提言となれば本稿を執筆した意味があるものとしたい。
本研究は、わが国の社会福祉士がこれまで以上に社会的評価を高めていくために何が必要かについて探求することを目的としている。探求のために、近年地域で独立して相談業務や成年後見など多様な業務に取り組み注目を集めている「独立型社会福祉士」の活動を調査するものとし、質問紙調査を実施した。58名から得られた回答を基に、その「特性」や「活動状況」「現状認識」等について分析した。理論的背景及び調査結果の分析により、「社会福祉士固有の科学的に裏付けられた専門的技術の確立」や「対価(報酬)体系の確立」「実習教育の強化」「実践評価体制の構築」等の必要性が示唆された。
筆者は長年に亘って家族を対象とする臨床的社会福祉の実践と関わってきた。ところがその実践において、依存者のケースでは、共依存問題のため戸惑ったり、行き詰まったりしたことがたびたびあった。この論文は、私が抱いた初期の疑問を振り返りながら、共依存に対する全般的な認識と理解を高めることに目的を置いて行われた。この目的を達成するための研究課題としては、第一に共依存問題を依存症者だけでなくその家族を含んだ家族の問題であることを明らかにする。この課題では、先行文献や論文と諸学者たちが定義した共依存概念の成り立ちを追って、共依存が依存症者とともに暮らす家族の問題であることを明らかにした。第二に家族問題としての共依存のアセスメントのあり方を提示する。共依存が当事者だけでなく、家族の問題でもあるとしたら、共依存をスクリーニングする前に、原家族の問題をアセスメントすることが求められると提案した。なお、筆者が開発した共依存尺度のプロセスの一部分として、簡易アセスメント方法の確定過程までを紹介した。この際、簡易アセスメントの項目を見出すために、ストンブリンク(Sandra Stonbrink)のCo-Dependency Inventory(CODI)を始めとする既存の共依存尺度21種類、524個の質問項目を翻訳して活用した。
介護保険の開始により、高齢者のケアは向上したかにみえるが、現実には施設では身体介護などに手をとられ、高齢者への心理的ケアに十分な時間がとれないのが現状である。そこで筆者らは、外部から施設への訪問セラピーを試みた。3特別養護老人ホーム、1デイケアセンター、2有料老人ホームに訪問を続け、すでに164回実施した。認知症高齢者はセラピー内容であるリラクセーショントレーニング、自律訓練法などがグループでできるようになり、芸術療法、化粧療法、認知療法などを楽しみながら皆と一緒に行うことができた。セラピー効果は4種類のアセスメントにおいて認められ、セラピストや入居者同士に人間関係もできてきた。訪問セラピーという新たな試みについて報告し、施設における心のケアの重要性について述べた。
口腔内微生物は、う蝕、歯周疾患、口腔粘膜疾患、歯性感染症などの原因となるほか、心内膜炎などの全身的感染症、日和見感染症、とくに高齢者の場合には誤嚥性肺炎などを引き起こす可能性がある。本研究では各種障害を有する高齢者群別に唾液中の総細菌数、口腔レンサ球菌数、カンジダ数について検討した。健康高齢者群55名(平均年齢72.6歳)、運動障害者群72名(平均年齢78.3歳)、認知症患者群30名(平均年齢76.7歳)、精神障害群28名(平均年齢63.4歳)を対象とし、健康成人群(平均年齢27.1歳)と比較検討した。唾液は自然唾液とした。総細菌、口腔レンサ球菌は血液寒天培地、カンジダはカンジダGS培地を用いてそれぞれ37℃48時間好気的に培養し、肉眼でコロニーを計数し、CFU(Colony Forming Unit)/mlとして比較した。高齢者群全体の唾液中の総細菌数は1.0x10^4~5.0x10^8CFU/ml(中央値4.6x10^7CFU/ml)、口腔レンサ球菌数は5.0x10^3~3.5x10^8CFU/ml(中央値3.2x10^7CFU/ml)であった。総細菌数、口腔レンサ球菌数ともに、認知症患者群以外のすべての高齢者群で健康成人群より有意に多かった(p<0.01~p<0.05)。高齢者群全体の唾液中のカンジダ数は0~2.9x10^6CFU/ml(中央値1.5x10^3CFU/ml)であった。カンジダ数はすべての高齢者群で健康成人群より有意に多かった(p<0.01)。義歯装着者にカンジダ数は有意に多かった(p<0.01)。義歯を装着する高齢者、およびその介護者には口腔清掃方法と義歯清掃方法の指導と徹底が必要であると思われた。
The Morphological Changes of Hepatocytes in Human Liver Tissues Immediately after Thawing(解凍直後のヒト肝組織における肝実質細胞の形態学的変化)
著者:成田 成,新倉 靖子,伊藤 政幸,清水 竜,浅岡 一雄,重松 昭世,佐藤 哲男
日米高齢者保健福祉学会誌 第2号(2007.3)p161-171
2007年03月31日発行
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In a preliminary experiment for future medical and pharmacological studies, hepatocytes in human livers were morphologically studied immediately after thawing. On histology, the nuclei of the human hepatocytes showed little pyknosis. The mitochondrial granules and plasma membranes of hepatocytes around interlobular connective tissues tended to be less prominent than those around central veins. The hepatocyte mitochondria were classified ultrastructurally into three types: normal size with high electron density matrices (TypeⅠ); swollen with low electron density matrices (TypeⅡ); and destroyed with low electron density matrices (TypeⅢ). Some hepatocytes had only TypeⅠmitochondria. Many hepatocytes had TypeⅠand TypeⅡmitochondria. Type Ⅲ mitochondria were observed in hepatocytes with destroyed plasma membranes. Furthermore, before freezing, almost all of the hepatocyte mitochondria were TypeⅠ. After thawing, although the desmosomes and the microvilli were observed on the surface of some hepatocytes, they were not clearly visible in many hepatocytes. These results suggest that, after thawing, mitochondrial and plasma membrane functions decrease in many hepatocytes. However, the data also suggest that the hepatocytes located around central veins are not readily affected by thawing.
グルコースが脳の海馬に作用し、記憶や学習を促進することはよく知られている。本実験では記憶以外にもグルコースが促進する機能があるのではないかという視点から健常な成人18名を被験者として4種の認知テストを試みた。テスト1は色と形の組み合わせの検出、テスト2は記号の記憶、テスト3は3色の組み合わせの検出、テスト4は語の流暢さをしらべる課題であった。その後、実験群(9名)にはグルコース(25g/300ml)を、対照群(9名)にはアスパルテーム(0.9g/300ml)を飲ませ、飲料摂取10分後に摂取前と同じテストを行って得点の差を比較した。語の流暢さ課題において実験群の得点差が対照群の得点差よりも有意に高かった。他の3種のテストについては有意な差は見られなかった。語の流暢さは前頭葉に損傷のある患者において特に劣っていることが知られている。反対にこのテストの成績が良くなった場合には前頭葉機能が促進されたと考えるのが妥当な推論と思われる。グルコースが語の流暢さ以外の前頭葉機能にどのような影響を及ぼすかが今後の研究課題となる。
<我々自身の無意識>としての「普遍化された優生主義」の社会哲学的含意 ―「応答型文章完成法(Responsive Sentence Completion Test)」を活用した分析を通じて
著者:永澤 護
日米高齢者保健福祉学会誌 第2号(2007.3)p139-150
2007年03月31日発行
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近年、遺伝子レベルの障害がもたらす諸問題の克服は、医療・保健・社会福祉が統合された政策・実践領域において、主要な社会的課題となっている。こうした状況において、個人、カップルの自由な選択による遺伝性疾患の診断、治療、予防という「新優生主義(Neo-eugenics)」理念の実践が、所謂「リスクグループ」の社会的選別過程となりつつある。本論においては、「この私の(または誰かの)生存が、他の誰かの生存よりも一層生きるに値する」という言説として明示化され得る無意識的信念を「普遍化された優生主義」と呼び、この「普遍化された優生主義」を<我々自身の無意識>として捉え直し分析する。本論では、「普遍化された優生主義」は、「遺伝子の選別・改変によるQOL(生存の質:Quality of life)向上は正当化できる」という言説として明示化され得る無意識的信念となる。<我々自身の無意識>としての「普遍化された優生主義」は、「応答型文章完成法」を活用したアンケート調査を通じて言語化されその社会哲学的含意が分析される。分析の結果として、<我々自身の無意識>としての「普遍化された優生主義」の社会哲学的含意は、「自由な選択はあるが、生存を序列化する選択肢は常にすでに決定されており、我々はその中で有効な選択をしなければならない」であることが明らかになった。
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