[日本学術会議協力学術研究団体]茶屋四郎次郎記念学術学会

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フラストレーション概念再考―意志心理学序説―
著者:田嶋 清一
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p195-214
2005年03月31日発行
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本研究の目的は第一に力動的なフラストレ−ション概念を批判して非力動的なフラストレ−ション概念を提案することである。第二に力動的な動機理論を批判して非力動的な動機理論を提案することである。第三にフラストレーション問題から自由であろうとする努力を意志とみなして、意志心理学の方法と実践の試みを提案することである。意志心理学の方法は努力である。意志心理学の方法としての努力とは、性癖を都合のよい名目と都合の悪い名目の両面から分析することである。私たちはこの努力によって、はじめて性癖から自由でありうる。
アメリカの退院計画研究とイギリスの中間ケア―その関連性について―
著者:児島 美都子
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p183-194
2005年03月31日発行
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筆者の目下の研究テーマは、イギリスの「概念としての中間ケア」(以下、中間ケアと略す)である。中間ケアに関するイギリスの文献を読みすすめる中で、アメリカの退院研究の影響が強いことを感じ、両国の研究の関連性をさぐることとした。本稿はアメリカの高齢者の病院からの退院計画研究がイギリスの中間ケア研究に及ぼした影響にテーマを限定して研究するものである。1997年、アメリカ、ミネソタ大学ポトフ教授らは、「高齢者退院計画の改善」と題する報告書を発表した。それは、「高齢者の病院からの退院先の選択は、その後の人生の選択に影響を及ぼすとこから重要な意味をもつ」という視点で、アメリカの1980年代初頭から1990年代半ばまでの退院計画に関する55編の論文をシステム分析したものである。報告書では、退院計画のプロセスを6つのステップに整理し、鍮型として示し、退院計画の構造的システム化を提言した。筆者は、イギリスの「中間ケア」には、この構想が取り入れられていると感じた。そして、それは中間ケア研究のリーダーであったA. シュタイナー博士を通して取り入れられたものと推測した。そこで、A. シュタイナー博士の著書を中心に両国の研究の関連性をさぐり、A. シュタイナー博士がどのような立場、どのような方法で、中間ケアの研究に取り組んだかについて文献とインターネット検索により調査した。その結果、A, シュタイナー博士について以下のことを発見した。1 ポトフ教授らの報告書は、中間ケア研究グループのリーダーシップを握る A. シュタイナー博士を通して、1990年代にイギリスにおける「概念としての中間ケア」に強い影響をおよぼした。2 A. シュタイナー博士は、イギリスのセミナーグループのキーパースンで、常にリーダーシップをとってきた。3 A. シュタイナー博士は、イギリス政府とセミナーを主催するキングス・ファンドのプライベートコンサルタントで、当時はイギリス、サザンプトン大学保健政策研究所の研究員、現在はアメリカ、カリフォルニア大学セントクルズ校の準教授で、イギリス、サザンプトン大教授も兼任している。以上のように、アメリカとイギリスの研究の間には、高齢者の退院計画に関する緊密な研究協力関係があることが分かった。この研究は、現在の筆者の研究テーマ「概念としての中間ケア」への理解を深める上で非常に有効であった。
グローバル資本主義下における<協働>の構成 ―ネグリ/ハート『<帝国>』の読解を手がかりにして―
著者:永澤 護
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p173-182
2005年03月31日発行
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本論は、グローバル資本主義下における<協働>の構成をテーマとする。本論では、この<協働>の構成は、相互的で対等なコミュニケーションを試みる実践として論じられる。また、この<協働>の実践は、個々人が他者との間で、生活の工夫や技を伝え合うこととして論じられる。この<協働>の構成は、<帝国>と呼ばれるネットワーク的権力のもとでのコミュニティーワークの構築という課題である。Ⅰでは、ネグリ/ハートの記述する「<帝国>」と<協働>の実践との関係を論じる。本論では、<帝国>を、個々人の生存を無際限に階層序列化する装置としてとらえる。ここで、「個々人が他者との間で、生活の工夫や技を伝え合うこと」という実践の狙いは、<帝国>の機能によって消されていた個の力を引き出すことである。Ⅱでは、<協働>が「顔」をキーワードにして論じられる。<協働>の過程は、他者の呼びかけへと応答する相互的な過程である。本論では、<転移>に関する洞察を視野に入れながら、この<協働>の構成過程が論じられる。Ⅲでは、<協働>の構成に向けた実践事例を論じる。結論として、<協働>の構成は、他者との出会いにおける私自身の<決意>の経験において現実化することが示される。
DV問題と介入のあり方について―群馬県を中心に―
著者:洪 金子,大橋 利雄,関口 恵美
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p159-172
2005年03月31日発行
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本論文では、DV防止法制定・施行の後、DVの現状がどう変わり、介入方法にはどのような変化があったのかを群馬県を中心に調べた。そのためDVと関わりを持つ県庁の人権男女共同参画課を始め、女性相談所、警察本部を訪問し、現地調査を行いながら、群馬県内で行われている介入と発生したDV事例に基づき、具体的な問題点を探って見た。女性相談所としては、具体的な治療プログラムが実施されていない点、警察としては、当直の人がDV相談の相当な部分を担当している点が早急に見直さなければならない問題点として浮き彫りになった。この作業を通して、DV防止法制定・施行とその後のDV対策に対する評価と共に、これからのDV対策のあり方と具体的なDVプログラムについて提言した。
学部教育における社会福祉士養成教育上の現状と課題
著者:生沼 礼一,大屋 陽祐,森下 早苗
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p145-158
2005年03月31日発行
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1987年の社会福祉士制度の成立は、「指定科目」「国家試験」を中心に福祉系大学の社会福祉士養成教育に大きな影響を与え、その結果、福祉系大学が急増し、社会福祉士の国家資格取得が学生にとって学修目標となり、教育課程に厚生労働省が定めた指定科目が配置されるようになった。2004年12月末の日本社会福祉士養成校協会の調査によると、社会福祉士国家試験受験資格を取得できる4年制大学は150大学になった。本研究では学部教育における社会福祉士の現状について、1)指定科目、2)実習教育、3)教育課程、4)国家試験の4点について、今後の学部教育における社会福祉士養成教育上の課題として明らかにした。
日本の障害者観の形成過程に関する研究 ―雑誌『民族衛生』にみる戦時厚生事業期の優生学思想と研究の分析を通して―
著者:大瀬戸 美紀
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p1133-144
2005年03月31日発行
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1930年に優生学研究の全国統一組織として発足した日本民族衛生学会は、優生断種を合法化した1940年の国民優生法の法案のたたき台を公表した。戦時厚生事業期において、国民優生法は人的資源の質の確保という政策的な位置付けを有していた。日本民族衛生学会では、優生断種の対象となる「悪質遺伝者」の選定を行うための方法論の1つとして家系研究を採用した。家系研究の成果により、民族優生方策の中に「不健全なる素質者」という医学的なカテゴリーが新たに登場した。本稿では、日本民族衛生学会の機関誌『民族衛生』の分析を通して、当時の家系研究の研究目的及びそれが国策として果たした役割や「科学的」知見として普及する過程を明らかにする。その上で、家系研究のもつ「科学性」が優生学に立脚した障害者観の形成過程に与えた影響や不健全なる素質者のふるい出しのための実際的な方法論研究として果たした役割について検討する。
トインビー・ホール時代のウィリアム・ベヴァレッジ ―セツルメントから社会開発へ―
著者:柏野 健三
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p121-132
2005年03月31日発行
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本稿の目的は、トンビ―・ホール時代におけるウィリアム・ベヴァリッジの活動を調査することによって、彼の社会的関心がセツルメント活動家から福祉政策(社会開発政策)へと向かった理由を明らかにし、今後の社会保障プラン作成にあたり、一つの政策立案根拠を提供することである。彼は、地方青少年・成人教育、地方選挙活動、スッテプニィ公共福祉カウンシル、そしてイースト・エンドの失業者救済に関与した。彼は、これらに関与することを通して、セツルメント活動が現行状態を変革するには十分ではないことを認識した。しかしながら彼は、国家による「良き社会」の実現を強調したとはいえ、自発的活動が現代民主主義の基本的要素であることも熟知していた。しかも彼は、自立を維持することによって社会に対する責任を確立することを望んだ。これらの点を考慮に入れて、我々は、現代社会においてベヴァリッジを超える社会保障プランを作成しなければならない。
社会福祉の原型
著者:小田 憲三
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p111-120
2005年03月31日発行
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現代において社会福祉と称されている事業や活動は、もともとはどのような形態のものであったのであろうか。一般的には、家族やコミュニティなどの共同体によって、ケアが提供されていたとされる。しかし、そのような共同体によるケアが社会福祉の原型とされていても、なかなか明確な事実の裏付けがなかったのである。それゆえ、そのような事実を探すことが必要なのである。また、そのような共同体による福祉供給は、その後、アルムス型、アリメンタ型、カリタス型に分化していったとされる。このような3つの基本型の性格についても、より明確な内容が明らかにされなければならない。
韓国における高齢化とサポート
著者:尹 文九,洪 金子
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p97-110
2005年03月31日発行
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本論文は韓国における高齢化の現況と高齢者を支えている制度及び政策を概略的に紹介することに第一次的目的を置いた。その上、高齢者福祉の問題点を明らかにし、これからの課題のあり方について提言した。特に、高齢者の問題全般を対象にしながら、高齢知的障害者の問題を実験的に取り扱い、関心を高めようと努めた。本論文では、大きく1.高齢化の現況とQOL、2.高齢者の為の福祉政策、3.認知症老人の現況と福祉、4.高齢知的障害者の現況と福祉について追究した。
心理社会的発達の観点からみた老年期のreminiscenceに関する研究
著者:大塚 裕子,渡邊 映子
日米高齢者保健福祉学会誌 第1号(2005.3)p85-95
2005年03月31日発行
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本研究は、高齢者の回想と適応との関連を検討し、老年期における回想の意味を明らかにすることを目的として、65歳以上の健常高齢者138名を対象に日常生活における回想のタイプと回想量や自我同一性達成度などとの関連について質問紙調査による検証を試みた。その結果、日常生活における回想について否定的な態度や感情を抱いているほど現在の満足度が低く、自我同一性の達成度も低いことが示された。しかし、両価型と積極型の適応指標の得点には、有意な差は見られず、回想をすること自体が心理的適応と関連しているとは言い切れないことが示された。頻繁な回想には「不適応状態への対処としての回想」と、「自己の歩んできた人生を振り返り、未解決の葛藤の解決と統合を促す心的プロセスとしての回想」の2つの種類があり、reminiscenceを用いて心理的援助を行う際には、対象となる高齢者が日常生活の中で、どのような回想を行う傾向になるかという事も把握し、適した方法を選ぶことの必要性が示唆された。
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