学術機関リポジトリ
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憲法の生存権規定を考える-憲法制定時の議論及び各国憲法との比較をもとに-
著者:喜多村 悦史
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p149-167
2018年03月31日発行
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健康で文化的な生活は自由人すべての生活目標である。その実現に必要なのは各人の自己努力であるとするのが伝統的な考えであり、勤労精神が重視されてきた。しかし近時はこれを古い考えとして退け、生活の諸事に渡って国家資金による直接的支援やサービスを要求する傾向が見られる。その際に持ち出されるのが現行憲法25 条、すなわち国家による生存権保障である。だがその考えは普遍的なのだろうか。また日本国民の感覚にマッチしているのだろうか。戦後の憲法改定時にさかのぼって25 条関連の議論を検証するとともに、現代諸外国憲法における類似条項を探ることで、現行25条の特異性を浮き彫りにする。そして今後加速化すると思われる現行憲法改正議論に一石を投じる。
子の学力に及ぼす親の収入-教育の機会均等は守られているか-
著者:簑輪 欣房
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p135-148
2018年03月31日発行
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文部科学省が毎年発表している全国学力・学習状況調査(以後、全国学力テストとする)の結果では、家庭の収入が多いほど、その子どもの学力テストの正答率が高い事が報告されている。すなわち、親の経済力(世帯収入)によって子どもの学力格差が生じており、収入の低い家庭の子どもの学力が低い傾向にある。このまま格差が広がると、低所得者層には重大な影響を与え、改善できない場合、生まれてきた環境で子どもの人生が決まってしまうという事態が起こりかねない。教育とは国の経済力や国を豊かにしていくためになくてはならないものであり、すべての人に平等に教育を受ける権利が憲法、教育基本法で保障されている。しかし、現状では所得の格差や様々な制度の問題で十分な教育を受けられないという問題は増加しているといえる。そのような問題を少しでもなくすために、教育格差の根底にある所得の格差を縮小するための政策や支援制度を充実させ、教育におけるセーフティーネットを広げ、充実させていくことで格差なく教育が受けられるようになると考えられる。
介護予防の推進上不可欠な回復期リハビリテーションと維持期リハビリテーションの連携強化に関する一考察
著者:河野 等
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p121-133
2018年03月31日発行
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介護予防に関する領域は、「健康悪化プロセス」ごとに系統づけられている。その構成としては、「発生予防」と「障害予防」、「悪化予防」という各カテゴリーが系統的に存在している(河野,2010)。後半2つのプロセスにおいては、リハビリテーション医療における回復期リハビリテーションと維持期リハビリテーションの連携強化が重要な位置を占める。本論文では、これらの回復期リハビリテーション(医療保険制度)と維持期リハビリテーション(主に介護保険制度)という両制度間に顕在化・潜在化している課題と解決策について検討した。分析の枠組みとしては、両リハビリテーションに関して、制度的側面・内容的側面の2つの視点に分けて分析を行った。上記の視点から分析と考察を重ねていく中で、両リハビリテーションに係る“人材” と“ 制度(仕組み)” と“ 技術” という3 領域の強化を図っていくことが、結果的に両リハビリテーションの連携強化につながり、ひいてはそれが介護予防分野の前進につながるということを確認できた。
理科の見方・考え方を働かせる指導計画作成の視点-単元6年「燃焼の仕組み」を通して-
著者:若崎 光美
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p101-119
2018年03月31日発行
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平成32 年度から完全実施される新しい小学校学習指導要領の理科の目標において,「理科の見方・考え方を働かせる」ことが強調されている。現行の学習指導要領の理科の学習においては,観察・実験の結果を整理しながら,自分の予想の適否について判断し,表現する等の学習活動が重視され,児童が自ら獲得した科学的な見方や考え方を日常生活に意欲的に生かしていくことのできる学習指導を展開してきている。新学習指導要領に記述されている理科の見方・考え方を働かせるとは,既習や現在の生活経験を通して得た理科の見方・考え方を新しい単元の学習の際に機能させることであると捉えられる。本論文では,新学習指導要領で求められている理科の見方・考え方を観察や実験等の学習活動に働かせ,自然の事物・現象についての問題を科学的に解決するために必要な資質・能力を育成するための指導計画のあり方について提言するものである。
現在、人口が世界一である中国は1999 年から高齢化社会に入り、高齢者の総数も世界で一番多く、介護が必要になる高齢者も増加の傾向にあると見込まれている。本研究は、利用者としての高齢者の視点から福祉用具の利用が普及できない原因を明確にすることを研究目的に、福祉用具に関する高齢者の認知度と消費意識についてアンケート調査を行なった。調査結果により、福祉用具の認知度が低い、利用率も低い。高齢者の加齢、年間収入、利用意識は福祉用具利用認知度に影響を及ぼすことを明らかにした。さらに、福祉用具の利用が普及されていない要因として、「福祉用具関連情報が少ない」「高価格」「福祉用具の役割について認識していない」ことを明確化にした。今後、福祉用具市場の現状、利用者のニーズ、福祉用具産業の生産及び開発状況を把握、関連政策に関連して、中国における福祉用具利用の普及の適用手法について検討する。
Significance of using certified health promotion facilities for people with memory disorders caused by brain injuries
著者:先崎 章
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p77-90
2018年03月31日発行
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This study investigated whether doing long-term, regular exercise had a positive effect on attentional and memory functions of people with brain injuries. Exercise therapy, including individual and group training, was conducted once a week at a health promotion facility in the Saitama Rehabilitation Center. Participants were people with acquired brain injuries having mild memory disorders without any physical disabilities. They also had relatively long-term medical histories (N = 35; 17 traumatic brain injuries, 8 hypoxic-ischemic encephalopathies, 8 cerebrovascular diseases, and 2 post brain tumor-surgery). Participants were classified into the continuing group (N = 19) that continued to participate in therapy at the end of March 2015 and the non-continuing group (N = 16) that had registered but dropped out of the program by the end of March 2015. “Attention” was assessed by FAM and compared between the start of therapy and at the time of the investigation. The results suggested that attention improved significantly in the continuing, compared to the non-continuing group. Participants showing improvements in both RBMT and TMT-A were 42% in the continuing group, whereas they were 13% in the noncontinuing group. These results suggest that continuing regular exercise is effective for improving attentional functions of people with brain injuries having long-term medical histories. Moreover, none of the participants in the non-continuing group refused to continue participating in the program of their own accord. It is concluded that structured exercise therapy conducted at health promotion facilities are effective for improving neuropsychological symptoms of people with acquired brain injuries.
子育て中の保護者における家族会参加および専門家による支援効果に関する研究~保護者の子育てへの意識の違いによる支援のあり方の検討~
著者:岡本 宏二・魏 孝棟
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p65-75
2018年03月31日発行
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本研究は、子育てへの社会支援の在り方の検討のために、質問紙調査によって一般保護者と障害児保護者の子育て意識の差異、障害児保護者間の意識の差異を明らかにし、保護者会(家族会)への参加および専門家支援の効果について検討した。子育て意識(4因子)、子どもの悩み(2因子)、専門家相談(3因子)、保護者会参加効果(2因子)、専門家の支援効果(2因子)等の間の相関分析から、一般保護者と障害児保護者の子育て意識において「充実感」と「孤立感」の関係が異なっていることが示された。また、クラスター分析によって、障害児保護者はクラスター分析により子育てに関して「ポジティブグループ」と「ネガティブグループ」に分けられ、子育て意識の各因子間の相関関係が異なった。専門家有効感と他の要因と関連はポジティブグループにおいて強いことが認められた。
知的障害のある夫婦の結婚・子育て支援に関する研究-結婚生活で生じる夫婦の困惑感と支援実践の課題-
著者:西村 明子
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p49-63
2018年03月31日発行
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本稿は、知的障害のある夫婦が地域生活上、結婚・子育てで生じる困惑感について質的データ分析法を用いて分析し、地域生活支援実践から課題を探り今後の支援体制の方向について検討することを目的とした。調査対象は知的障害のある夫婦8組である。8組にインタビュー調査を行った。その結果、【結婚生活までの困惑感】、【日常生活上での困惑感】、【人間関係構築への困惑感】、【予測できない子育ての困惑感】、【子育ての成長過程での困惑感】の五つの困惑感のカテゴリーを抽出した。これらの困惑感は支援実践との相互の関連から生じていることがわかった。支援実践からの課題として、「継続的に家族を支えるキーパーソンの必要性」、「母子間コミュニケーションへの支援」、「家族への権利擁護の視点からの支援」を早急に検討することの重要性が示された。
ナトリウム利尿ペプチドファミリーの進展-過去の我々の実験結果を踏まえて-
著者:戎 弘志
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8巻(2018.3)p37-48
2018年03月31日発行
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ナトリウム利尿ペプチドは心臓から分泌されていて、3種類のナトリウム利尿ペプチドファミリー(ANP、BNP、CNP)として、ナトリウム利尿により心臓負荷を下げて血圧を降下させることが分かっている。我々も以前、ANPに対する基礎研究に着手して、ラット上頸部交感神経節(superior cervical sympathetic ganglion,SCG) などの末梢神経節組織中にも脳と同じように含まれていること、ANPは組織内のサイクリックGMPにより、神経伝達機能の修飾をおこなっていること、コリン作動性シナプス伝達系との関連などを明らかにした。現在では、血中BNPが心不全の診断、治療効果判定に有用な臨床検査法として重要視されている。また、ANPは現在では心不全治療薬として臨床応用されている。さらにANPの血管作用により、遊離した癌細胞の血管付着を防ぎ、さらに癌の血行性転移の抑制にまで効果の広がりをみることができ、さらなる発展を期待するものである。
小学校の家庭科 被服分野における学習内容の検討および家庭科教員養成の授業での実践例
著者:浅井 恭子
茶屋四郎次郎記念学術学会誌 第8号(2018.3)p23-36
2018年03月31日発行
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小学校家庭科では、衣食住や家族の生活等、日常生活に必要な知識や技能を身に付けさせ、生活の中で実践できるようにすることが必要である。そのためには、教師側の知識や技術の向上も必要となる。そこで、本論文では、2008(平成20)年の家庭科学習指導要領改訂をもとに小学校家庭科の学習内容等をふまえて、効果的な学習展開ができるよう考察することを目的とした。特に、被服分野の授業展開を実践するために、どのような学習題材を選ぶべきか、また効果的に教えるための方策をいかにすべきか考察した。そして、5年生児童における縫い方の展開例を提案した。さらに、大学における家庭科教員養成課程の授業において、小学校家庭科の教科書を使用して被服実習を行いながら、授業時間内での基礎的な技術の習得と理解が得られるかを検証した。そして、簡単な縫い方から作品製作へと学習展開が実践できるように授業実践事例を行い、家庭科の学習の体系化を図った。
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